花画像による私的さくらの花図鑑。

山桜(ヤマザクラ)とお花見・人々の暮らし

山桜(ヤマザクラ)

山桜(ヤマザクラ)/ Cerasus jamasakura

山桜(ヤマザクラ)/ Cerasus jamasakura

日本の野生のサクラの代表。本州・四国・九州に分布する落葉高木で、幹の直径は1mを越えるまで生長し、サクラの仲間では巨樹となり、長寿な種です。山地に広く自生しています。若葉と同時に開花するため、ソメイヨシノと比べると、若葉の色(赤味)が混ざって見えます。オオシマザクラは若葉が緑色なので、そこで区別できます。有名な吉野山のサクラは本種。樹皮は紫褐色。

この山桜。自生する山桜は、人間と同じように1本1本花の形・色も様々で、開花時期や咲き方も異なります。それがとても魅力的!

お花見の事

山桜(ヤマザクラ)/ Cerasus jamasakura

今のお花見はソメイヨシノがメイン。でも、さくらのお花見の文化は平安時代以降だそうですが、その頃は山桜がメインでした。

こぼれ話 「お花見」
「花見」を広辞苑で調べると、「花(おもに桜)を見てあそびたのしむこと」とある。現代では、お花見の対象はソメイヨシノになっているが、ソメイヨシノが広まる明治以前は、お花見と言えばヤマザクラだった。吉野の桜とは、このヤマザクラである。

庶民にまで花見が定着したのは、落語の「貧乏花見」にあるように江戸中期とされている。江戸では上野寛永寺のサクラが有名だったが、徳川吉宗が、庶民も花見を楽しめるようにと飛鳥山(東京都北区)や浅草隅田川河畔にサクラを植えさせた。上野の山は酒、団子が御法度だったため、庶民には飛鳥山や隅田川が人気だったようだ。

さらに時代を逆上ると、花見の対象がヤマザクラになったのは平安時代以降とされている。当時の花見は、文化人や貴族の宴で、おもに歌集や文学作品の中からうかがえる。平安以前は、中国文化の影響が強く、花と言えばウメになる。「万葉集」にもウメの花をめでる歌が多い。

出典 : 木のぬくもり・森のぬくもり樹げむ樹げむのTree World

山桜の名所

吉野山

奈良県の吉野山は昔からヤマザクラの名所として有名です。吉野山

大峰山系北端の吉野山には約3万本のヤマザクラが植えられているとされる。一目千本と言われ、北部の山裾から南の山上へ順に、下千本、中千本、上千本、奥千本と呼ばれている。もちろんもともとの自生ではなく、桜が金峰山寺蔵王権現のご神木であるとされたことによる。

金峰山寺を開いた役小角(修験道の開祖)が、桜の木に蔵王権現を彫ったことから桜が信仰の対象となり、行者たちは競って桜の苗を寄進する風習がおこった。このために平安時代から多くの桜が植えられるようになったのだそうだ。
出典 : 木のぬくもり・森のぬくもり樹げむ樹げむのTree World

桜川のサクラ

茨城県桜川市(岩瀬地区)にある「桜川のサクラ」は、古来より「西の吉野、東の桜川」と並び称されるほどのサクラ(山桜)の名所だったそうです。

磯部地区の桜川公園周辺には、国指定天然記念物に指定された、学術的に珍しい11種の桜の品種(桜川匂・樺匂・梅鉢桜、白雲桜、薄毛桜、初見桜、初重桜、源氏桜、大和桜、青毛桜、青桜)が保存されているそう!

山桜と人々の暮らし

山桜(ヤマザクラ)/ Cerasus jamasakura

東日本大震災で東北を襲った津波は、100年に一度は三陸に来ます。震災の記憶を100年後に伝承するための桜の植樹活動を行っていますが、東北に伺うと、桜のエピソードをよく聞きます。

春、農業を始める”時”の目安は山桜。山桜の開花の様子で、種まきや田植えを始める事から「種まき桜」「田植え桜」と今でも呼んでいる、というお話は各地で伺います。

また、山桜は、若枝は無毛ですが、翌年から皮目が多くなり皮目は横に長くなる。材は緻密で、建築、家具、器具、楽器材、彫刻、樹皮の細工物など人々の暮らしといつも一緒にありました。かつては浮世絵の版木などに使われたと言います。木材が硬いこと、木目が細かく一定であること、乾燥時と濡れた時の伸び縮みが少ないこと等、優良天然素材として、お箸やまな板など、食に関わる道具としても暮らしの中で深くかかわってきました。

今年は、東北の未来に津波を伝承する桜に繋がる、かわいい商品が出来ました。

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地球のために、オーガニックコットン100%にこだわらず10%の商品を100倍の人に届ける活動を展開している、オーガビッツプロジェクトが、木工房「laboratory」の田中英一さんとコラボレーションしたのは、赤ちゃんのための「ファーストスプーンのギフトセット

赤ちゃんが、最初に口にするスプーンは山桜から作られた優しいスプーン。こんなに優しい取り組みが広まると、素敵だな、と思います。

庭木・公園等で成長を開花を楽しませてくれるだけではなく、私たちの暮らしは桜と深く繋がっています。