花画像による私的さくらの花図鑑。

桜・神代曙(ジンダイアケボノ)とこれからの桜

桜・神代曙(ジンダイアケボノ)

桜・神代曙(ジンダイアケボノ)

桜・神代曙(ジンダイアケボノ)/Prunus x yedoensis ‘Jindai-akebono’

染井吉野(ソメイヨシノ)と同じ親のオオシマザクラとエドヒガンの交配種。花は中輪、一重咲きで淡紅色。開花期は4月上旬。花弁に部分的に濃いピンク色がのこる姿が素敵です。

神代曙(ジンダイアケボノ)は、東京 調布市の神代植物公園で生まれました。西田尚道氏が東京都調布市(神代植物公園)にあった個体から発見した品種で、各部にエドヒガンの特徴が見られます。ソメイヨシノに比べやや色が濃く一重ばかりの固体と旗弁や5枚以上の花弁を持つ個体もあるとの事。

小枝や葉に香りがあって、花はソメイヨシノよりやや小形でピンクの色が濃いめ。一ヶ所にかたまって咲いて、永く色褪せず保つ特性があります。

桜・神代曙(ジンダイアケボノ)

写真は、ある日の神代植物公園にある原木。開花時期は染井吉野(ソメイヨシノ)よりもやや早いので、今頃は満開かと思います(会いに行きたい!)

戦後間もない頃、調布市の神代植物公園に桜の苗木を植える事なり、この時、もともとワシントンに送られたソメイヨシノの種をとって育てた「アケボノ」と呼ばれた桜の苗木がアメリカのワシントンから神代植物公園に6本を贈られました。ワシントンから送られた枝を接ぎ木したら、母木の桜が色白の花なのに接ぎ木のサクラの花は赤みがかり、咲く時期も早い桜になったそうです。なので母(?)はソメイヨシノになるけれど、父は不明だそう。この桜は「神代曙」と名付けられ、現在でも神代植物園で美しい花が見られます。

これからの東京の桜

桜といえば”染井吉野(ソメイヨシノ)”。国内の桜の8割を占めているといわれています。(ソメイヨシノのお話は次の投稿で)

染井吉野(ソメイヨシノ)の寿命に関してのお話は、ここ数年時々ニュースなどにも取り上げられる事が増えてきました。染井吉野(ソメイヨシノ)は、皆さんご存じの様にとても美しく、成長が早い桜です。しかし、寿命は短く60年~80年と言われており、戦後や東京オリンピック前後に植えられたたくさんの染井吉野(ソメイヨシノ)は、そろそろ寿命を迎え、「倒木の危険」に瀕している木も多くあるそう。

そこで、染井吉野(ソメイヨシノ)の代わりに植えることを推奨されているのが、この”神代曙(ジンダイアケボノ)”です。

”神代曙(ジンダイアケボノ)”と”染井吉野(ソメイヨシノ)”

”神代曙(ジンダイアケボノ)”と”染井吉野(ソメイヨシノ)”は似ているところが多い桜ですが、”神代曙(ジンダイアケボノ)”には優れた点がいくつかあります。

似ているところ

  • 開花時期 : 3月下旬から4月上旬(東京)若干”神代曙(ジンダイアケボノ)”の方が早い
  • 色・形 : 花は中輪、一重咲きで淡紅色で特徴が似ている
  • 親 : 同じオシマザクラとエドヒガンを親にもつ交配種

優れている点は

  • 寿命 : 神代曙(ジンダイアケボノ)は1991年に品種認定されましたが、寿命がやや長い可能性がある
  • 木の大きさ : 木の大きさが、染井吉野(ソメイヨシノ)より小ぶりのため、狭い舗道などで枝が邪魔になりにくい
  • 病気 : 染井吉野(ソメイヨシノ)は”てんぐ巣病”にかかりやすい特徴がりますが、神代曙(ジンダイアケボノ)は丈夫

既に、日本花の会 では、テング巣病が伝染性の病気である為、継続して配布することがこの病気が拡大につながることを懸念して 平成17年度から染井吉野(ソメイヨシノ)の配布を中止し、平成21年度からは苗木の販売を中止、神代曙(ジンダイアケボノ)への植え替えを推奨しています。

2017年の桜の時期に想う事

何度かお伝えしている、東日本大震災の津波の伝承のために東北で植樹している桜は、寿命が長い原種・江戸彼岸桜などをメインに植樹しています。地域の方々からのご要望でこの美しい神代曙も植樹させていただく事があります。

しかし、自分たちが小さな頃から毎年春に美しい花を咲かせ、希望や勇気をくれ、その美しい花姿で感動を与え続け、日本人に桜を愛でる文化、いのちを愛でる心を教えてくれたのは・・・間違いなく、今、寿命を迎えようとしている染井吉野(ソメイヨシノ)だと思っています。

今日の近所の染井吉野(ソメイヨシノ)は7~8分咲き。美しい大きな木にたくさんの花が咲き誇っていました。次の投稿は、染井吉野(ソメイヨシノ)にしたいと思います。