花画像による私的さくらの花図鑑。

笹部桜(ササベザクラ)と水上勉氏「桜守」

笹部桜(ササベザクラ)

笹部桜(ササベザクラ)

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笹部桜(ササベザクラ)/ Cerasus leveilleana ‘Sasabezakura’

インパクトのある桜。淡紅白色で、花弁は8~20枚 開花時期は4月上旬~中旬。半八重咲で中輪の笹部桜(ササベザクラ)。高木になります。とても美しい桜です。

笹部桜(ササベザクラ)

笹部桜は、笹部新太郎氏の庭に芽生えた実生の桜で、カスミザクラとサトザクラ類との交雑種と推定されています。芽吹きから成長し5年後に開花したので笹部氏は「五歳桜」と仮名をつけていましたが、1978年に亡くなる前に笹部桜と名づけるよう、遺言があったといわれます。元東京農業大学教授で理学博士・林弥栄氏により、霞桜にオオシマザクラ系の里桜が交雑したものと推定され”笹部桜”の学名がつけられました。最近のDNA解析の結果から、ヤマザクラ×ソメイヨシノとの結果も確認されています。新しめのさくら。

桜には、本当にその時代・時代で深い想いがたくさん込められています。

どうやら笹部新太郎氏は、ソメイヨシノには考えるところがあった様です。

笹部新太郎氏と水上勉氏「桜守」

笹部桜(ササベザクラ)

この写真の笹部桜は実生だそう。上の笹部桜と少し雰囲気が違います。

水上勉氏の小説「桜守」のモデルとなった笹部新太郎氏が、実生の中から選出育成した桜。

笹部さんの晩年は子どももなく、妻に先立たれ寂しいものでした。神さまが哀れんだのか、これまでの集大成のような桜が花を付けます。 大阪から神戸の岡本に居を移した昭和35年、持ち運んだ種が庭に落ちたのです。成長が早く半八重の気品のある花で、5年で花をつけたことから笹部さんは五歳桜と名づけ、近所の人は新太郎桜と名づけました。 10年もすると二階の窓から花見ができるようになり、成長の邪魔になるようなら家を取り壊してほしいと笹部さんは思いました。笹部さんはこの桜の成長を楽しみに生きたのです。 昭和53年笹部さんが亡くなり、後を託された人たちは笹部桜を残すことに奔走しました。昭和56年、笹部邸は神戸市が買い取って公園になり、60年、笹部桜が新品種と認められ、正式に笹部桜と命名されます。神戸市は桜守公園の笹部桜を市の木に指定し、兵庫県が天然記念物に指定しました。樹齢30年に満たない木を指定した前例はありません。
よみがえる鎮守の森と桜の園・桜物語:笹部桜より

また、笹部新太郎氏はソメイヨシノに席巻されて日本各地の桜がなくなってゆくことを憂え、日本古来の桜の保存とソメイヨシノに代わる桜 の品種改良に生涯をかけられたそう。

笹部桜(ササベザクラ)

そんな、笹部新太郎氏をモデルに描かれたのが、水上勉氏「櫻守」。
「櫻守」という言葉に胸が熱くなります。

岡本南公園

神戸市が笹部邸を買い取り公園にしたのは、岡本南公園。「桜守公園」とも呼ばれています。笹部桜の原木は震災後、枯損してしまったそうです。園内には、ササベザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンなど10種類約30本が植栽され、解説板が随所にあります。

気になる1冊を発見^^;